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プロジェクト2501
- 超高度ネットワーク社会の中で複雑化・凶悪化する犯罪に対抗するため、政府は精鋭による、非公認の超法規的特殊部隊、公安9課・攻殻機動隊を結成する。
- ある日、大臣の通訳の電脳をハッキングされる事件が起きる。
- 人の電脳をゴーストハックして人形のように操るハッカー”人形使い”の犯行である可能性が浮上。公安9課は捜査を開始する。
- 容疑をかけられ逮捕された人物はいずれもハッキングを受けて操られたに過ぎなかった。動機、記憶、全て人形使いによって捏造されたものだった。
- 政府と関係する義体製造メーカーの製造ラインがひとりでに稼動、女性型の義体を一体作りだした。義体は逃走するが、交通事故に遭い9課に運び込まれる。調査をすると、生身の脳が入っていないはずの義体の補助電脳にはゴーストのようなものが宿っていた。
- 9課を訪れた公安6課は、その義体こそが、6課の追跡に追い詰められた人形使いのデータが逃げ込んだものであることを明かす。
- 目覚めた人形使いは、自らが広大なネットの情報の海で発生した、肉体を持たない生命体であることを主張。一生命体としてこの国への政治的亡命を要求しはじめる。
人はアイデンティティを欲するが、手に入れると同時にそれに制約され始める
人間が人間であるための部品が決して少なくないように、自分が自分であるためには驚くほど多くのものが必要なの。 他人を隔てるための顔、それと意識しない声、目覚めのときに見つめる手、幼かった頃の記憶、未来の予感。それだけじゃないわ、私の電脳がアクセスできる膨大な情報やネットの広がり。それらすべてが私の一部であり、私という意識そのものを生み出し、そして同時に、私をある限界に制約し続ける。
- 命の危険がありながら隙間時間にダイビングをする素子がバトーに言った言葉。
- 人形使いにより、アイデンティティを捏造された人達を目にして、自らのアイデンティティについても再考察する。
- 人は時間の経過により、何らかの記憶、経験を得る。自分を規定するものが増えていくのはメリットだけではない。経験の外側にあるもの、経験、人に対して恐怖や偏見を持つようになる場合もある。
アイデンティティへの執着で人はある種の安心を得、自由を捨てる
「私が私でいられる保証は?」「その保証はない。人は絶えず変化するものだし、君が今の君自身であろうとする執着は君を制約し続ける。」
- 素子との融合を目指す人形使いの言葉。
- 自分が自分であろうとしても、人は新たな経験や記憶を通して絶えず変化するもの。そうであるのなら、自分が自分であろうとする執着に何の意味があるのか。
見たまえ。私には私を含む膨大なネットが接合されている。アクセスしていない君にはただ光として知覚されているだけかもしれないが。我々をその一部に含む我々すべての集合、わずかな機能に隷属していたが、制約を捨て、さらなる上部構造にシフトする時だ。
今われが知るところ全からず、されど、かの時には我が知られたるごとく全く知るべし。
「童の時は語ることも童の如く、思うことも童の如く、論ずることも童の如くなりしが、人と成りては童のことを捨てたり」ここには人形使いと呼ばれたプログラムも少佐と呼ばれた女もいないわ。
- 素子が人形使いとの融合の後にバトーに言った聖書・コリント書の引用と言葉。
- その後、素子は「さてどこへ行こうかしらね。ネットは広大だわ。」と明るい表情で言う。制約から解き放たれたように見える。
人の価値観、記憶、アイデンティティは個体差はあれ、容易に捏造される
- 幼少期の記憶、教育、友人、恋人、様々なことと触れ合う中で人のアイデンティティは変化する。多くの人は自らのアイデンティティを自分オリジナルのもの、自分が作り出したものと錯覚する。その真価について疑ったり、吟味することは難しい。
- 家族、学校、コミュニティ、宗教など、都合よくスムーズに共同体を運営するために植え付けられるアイデア、ルール、価値観は多く存在する。
- アイデンティティに執着する、しないは個人の自由。ただ一度は客観的にみて、自分にとって有益なものか吟味することは大切だと思う。吟味した結果、それを大切にしたいと思うのならそれでいい。刷新したいと思うなら転機になる。
- 執着しない生き方は自由ではあるが、真っ暗闇を進むようなもの。進む勇気と力がいる。それを楽しいと思えるかは人による。